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日本生理学会男女共同参画推進委員会シンポジウム
男女共同参画の過去、現在、そして未来に向けて ーその1


  日本生理学会男女共同参画推進委員会シンポジウムは、生理学会大会3日目に水村和枝先生の座長によって次のようなプログラムで行われた。
  1. 日本における女性研究者のルーツ
    • 黎明期の女性科学者−理化学研究所の女性研究者を中心として−
        並木和子先生
        (椙山女学園大学名誉教授)
    • 女性医師の働く環境
        山本 蒔子先生
        (東北大学大学院 腎・高血圧・内分泌科)

  2. 男女共同参画の今−女性研究者を女房にもって−

  前半の2演題は、いかにして女性が研究者となるための道を切り開き、女性医師が育児環境をよくするための努力 (大学病院内保育所の確保) をしてきたかの貴重な体験談であった。1913年、旧帝国大学 (東北大) に初めて入学が許された丹下ウメ、黒田チカ女史、また、入学が許されなかったが大変なご努力が認められて無給副手や全科選科生として北大に受け入れられた辻村みちよ、加藤セチ女史が、1917年に「科学者たちの自由な楽園」として設立された理研で、鈴木梅太郎博士ら寛大な上司のもとで自由にのびのびと研究を進展させていた様子が語られた。並木先生をはじめとして、理研の女性研究者たちの存在は普通のことであって、保育所を作ってほしいと思うこともなく、よき理解者のもとで充実した研究生活を送られたようであるが、山本先生は、30年前の長女出産を機に、女性医師の組織を作り、育児環境を整備して来られ、現在も男女共同参画推進に取り組まれている。会場には日本生理学会前会長金子章道先生をはじめ、子育てをすでに済まされた男性研究者、ただいま奮闘中、もしくはこれから奮闘するであろうと見られる男性研究者も聴いている中で、後半、女性が子供を持っても研究を続けるための秘訣や育児法が、男性科学者の視点から語られ、終始笑い声が絶えない和やかなシンポジウムであった。
(文責:生理学会男女共同参画推進委員会委員 持田澄子)
生理学会大会において
男女共同参画シンポジウムを開催して

生理学会男女共同参画推進委員会委員長  
水村 和枝


  生理学会の男女共同参画推進委員会では、他の学会とは異なり今までシンポジウムをやって来ませんでした。その代わりに、男女の研究者が性によらず、ともに十分な研究・学会活動ができる条件を作るために、大会時保育室の設置や、アドバイザー制発足のためのメンター制についてのワークショップの共催、アドバイザー制の設置などを行ってきました。しかし、さらに男女共同参画の進め方を歴史や背景、現実を通して、広く生理学会会員と一緒に考えて行くために、今年からシンポジウムを企画することにしました。私たち女性研究者の現状を認識するにはまずそのルーツを知ることが大事であろうし、研究者が何に苦労しどのような工夫を重ねて研究を続けてきているのか、政策がどうなっていて将来的に研究者のおかれる環境はどう変わるのか、などについても知る必要があるだろう、ということから、ヤ男女共同参画の過去、現在、そして未来へ向けてユという題で始めることにしました。具体的な内容は持田先生の記事にかかれているので省略しますが、講演者4人の方のお話は企画した委員会の予想をはるかに超えてすばらしく、またユーモアもあって和やかな雰囲気でした。男女共同参画は女性ががんばるだけでは成り立たない、すばらしい男性がパートナーとして必要だ、と強く感じました。聴衆も予想より多かったのですが、もっと若い方、特に男性に聞いてほしかったと思いました。委員会では来年度の群馬大会では任期制についていくつかの側面から検討することを考えていますが、私としては若手の会とも連携を取って今年よりもっともっとたくさんの若手の参加が得られるよう工夫しなければいけないと、思いを新たにしました。

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